Sweetie *

ヘム独身AUのえっちぃだけのヘムトム。
トムの家に来ていてもいいし、一緒に住んでてもいい。

あくびを噛み殺すと、目尻に涙が浮かぶ。
パソコンの電源を落として疲れきった目をこすり、空になったグラスを片付ける為に立ち上がった。
深夜2時過ぎ。
これ以上起きていたら明日の朝起きられないなと判断して、グラスを流しに置いて、部屋の電気を消して寝室に向かった。
音を立てないようにそっと、恋人が眠る部屋に滑り込む。ベッドに近付くと静かな寝息が聞こえてきた。
クリスはしばらくまともに眠れていなかったらしく、日付が変わる前に謝りながら床に付いた。
よく眠れている様子に安堵して頬にキスを落とすと、クリスの口角が微かに上がる。
普段は落ち着いて見える恋人の幼い表情は貴重で、つい顔が綻んだ。
起こしてしまわないように、ゆっくりシーツの中に潜り込む。その中はクリスの体温で温められて心地いい。
そのまま目を閉じてしまおうと思ったところで、アラームをセットし忘れたことに気が付いた。
まぶしいかな、と少し悩んで、でもちょっとだけだからとベッドサイドに置いてある携帯に手を伸ばした。
画面を確認して、時計をセットする。
作業はすぐに終わって、画面の明かりを落とした時、背後から手が伸びてきた。
するりと腹部に巻き付き、抱き寄せられる。
「トム……寝るの?」
「うん。ごめん、起こしちゃった?」
「へーき……」
後ろを振り向いてみると、クリスは目も開けずにもごもごと喋っている。どうやら相当眠いらしい。
半分寝ている彼の口調はどこか幼く聞こえる。口もまともに動いてないのに、回された腕の力強さだけは確かだった。
ぎゅっと引き寄せられて、無防備なうなじに唇が落とされる。
「っクリス、くすぐったいよ……」
「かわいい……」
ちゅ、ちゅ、と音を立てて口付けられる度に身体が震えた。
なんとかそれから逃れようと、身体の向きを変えて向かい合う体勢をとると、うっすらと目を開けたクリスの指が頬に触れてキスをされる。
酸素を取り込もうと開いた隙間から舌が侵入してきて、口内を蹂躙した。身体は勝手に反応して、呼吸が速くなる。
「ん、っはぁ……クリス……?」
クリスは無言でキスを繰り返し、服の上から身体の線をなぞった。ぴくり、と身体が震える。
服の上をはい回る指先と、口内を暴れる舌の感触で意識が散漫になっていく。ああ、もう流されてもいいかと、そんな気持ちになって弾力のある舌に吸い付くと、熱を持った手のひらが服の隙間から入り込んで素肌に触れた。
普段よりも高くなっている指の温度に引きずられるように、僕の体温も上がっていく。触られた脇腹がじりじりと先を求めてしまいむずがゆい。
服の中に入り込んだクリスの手は、胸の尖りと掠めて腹筋を撫でていく。彼の指先が敏感な場所に触れる度に、塞がれた唇からくぐもった声が漏れた。
肌を撫でながら熱を持った手は少しずつ下腹へと向かっていく。
再び脇腹を通りすぎ腰を撫でたと思うと、躊躇うことなく下着の中に手が滑り込んで、やわやわと臀部を揉むように撫でた。
自然と呼吸が上がる。
唇を離し、彼の首筋に顔を埋めて声を殺し耐えていると、脚を動かした拍子に太腿が彼の股間に触れて、ごり、と硬くなったものが当たって反射的に身を竦めてしまった。その熱さを思い出して、身体の奥が疼く。
そんなこちらの反応を見越したかのように、クリスの指先が臀部の奥に隠れた窄まりを撫でた。
「んんっ……クリス、するの……?」
先を想像してしまっている身体は熱を孕み、僕の性器は硬さを持ち始めている。クリスからの返答はない。
窪みをかすめた指先がそこから離れて、柔らかな肉の上を通り、再び腰へと辿り着く。そのまま背骨を撫でているところで、身体を這っていた腕の動きが止まった。
静かな快感の波が落ち着いたことに息を吐き、ほっとした半面、火照ってしまった身体は続きを求めている。
熱を持った下半身が落ち着かない。
しかしクリスに動く気配はなく、不思議に思って顔を覗き込むと、クリスはその青い瞳を閉ざして気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「……え?」
思わず声が出た。
腰骨に乗せられた腕は完全に脱力し、その重みを伝えてくる。
さっきまで熱烈なキスを繰り出していた唇は、規則正しい呼吸を繰り返していて、彼が夢の中にいることはどこからどう見ても明白だった。
え?寝ぼけてた?いつから?
頭の中にはクエスチョンマークばかりだ。
確実に意思を持っているような動きをしていたのに、ただ寝ぼけてただけだなんて。それに煽られてその気になってしまったなんて、僕が馬鹿みたいじゃないか。一人だけ舞い上がっていたなんて恥ずかしすぎる。
さっきとは違う意味で顔に熱が集まる。穴があるなら入りたい。
羞恥心に耐えられず両手で顔を覆ってみたものの、身体が熱を持ってしまったという事実は変わらず、性器は下着を押し上げたままだ。
期待してしまっていた後孔は物足りないと訴えている。
一人で処理するしかないかと考えると、ため息がこぼれた。
何が悲しくて恋人と隣り合って寝ているのに、自分で慰めなければならないのか。
気持ちよく眠るクリスが恨めしくて、整った鼻をつまんでやると、苦しそうに眉間に皺が寄せられた。なかなか見ることのない表情に満足して、トイレに向かうために背を向けてベッドを抜け出そうとしたところで、クリスの腕に引き止められた。
腰に乗せられていた腕に力が入り、背後から抱き寄せられる。
「ええ……?」
なんとか身体を捩じって様子を窺うが、起きた気配はない。また無意識にやっているらしい。
普段なら嬉しいその反応も、今は僕を困惑させるだけだ。つい情けない声が出てしまったのも仕方がないだろう。
どうしたものかと考える。
彼の熱に触れ続けているせいで、体温は下がりそうにない。何しろ臀部にクリスの硬くなったものが当たっていて、意識せざるを得ない状態だ。
僕が困っていることに気付きもしないで、そんなに穏やかな顔で眠っているなんてずるい。君に熱を与えられて僕はこうなってしまっているのに。
少し困らせてみたらどうなるだろう?そんなことを考えてみたら、少し鼓動が速くなった。
いつもは彼に翻弄されてばかりだけど、僕がする側になってみたら?いつも余裕の彼の表情が変わるところを想像すると、なんだか楽しくなってきてしまった。
僕だって困っているんだから、少しくらいイタズラしても許されるだろう。
そう考えることにして、僕は彼に向き直ると、存在を主張している彼自身へと手を伸ばした。

布越しに彼の性器をやわやわと揉んでみると、そこは簡単に硬度を取り戻した。多少動きはあるものの、起きる気配はない。
それなら、と今度は下着の中に手を差し入れて直に触ってみる。反り返っているそれは熱く、張り出した先端や筋が感じられて、触られてもいないのに背筋をゾクゾクと快感が駆け上がって、それだけで僕の性器も硬さが増したのがわかった。
彼の顔を見ながら彼の性器に触れている。その感触はまるで麻薬のようで、僕の頭の中を「もっと」という言葉が支配していく。
握っている性器の先端からぬるりとした液体が溢れるのと同時に、クリスは小さな声を漏らした。
いつも先に喘がされて、ぐずぐずにされてしまう僕は、じっくり聞いたその声に興奮せずにはいられなかった。

もっと気持ちよくなりたい。
もっと気持ちよくなってるクリスが見たい。

そう思ってしまうと、もうどうしようもなくて、僕はクリスの頬にキスをしてから布団の中に潜り込んだ。
自分がこんなことをするなんて考えたこともなかったけど、今はそんなことはどうでもいい。
彼の腕から逃れて足下まで身体をずらす。クリスが冷えてしまわないように、かけてあるシーツはそのまま。
彼の腰の位置まで下がってパジャマを下着ごとずらすと、屹立した彼のものが目の前に現れた。ごくり、と喉が鳴る。
手で握り込んでゆるゆると動かすと、再度ぷくりと先端から透明な液がこぼれた。それを巻き込んで手を動かし続けていると、にちゃにちゃと音がする。
僕は彼に触れているだけなのに、だんだん意識がぼんやりしてくるようだ。
手の中のものに夢中になっていると、クリスが小さく声を上げて寝返りを打ち、今度は仰向けになる。
少し驚いたが、それに合わせて移動し、今度は足の間に収まって濡れた屹立の先端を口に加えた。
舌に触れる感触がリアルで、お腹の奥がじわりと熱くなる。今、口の中にあるものが身体の奥をかき混ぜてくれるものだとわかる。
一度唇を離し、舌を這わせて裏筋を舐め上げ、今度はもう少し深くまで咥え込んだ。
ちゅぷ、と口内で音がする。口の中で彼の存在を感じる度に勝手に息が上がっていって、いつも抱かれている時の情景が甦ってしまい、僕は自分の性器に手を伸ばした。
さっきよりも硬くなったそれは、少し弄ってやるだけで簡単に快感を拾い上げる。クリスの中心を口に含んだままゆっくりと自分自身を撫でているところで、急に空気の通りがよくなった。
「トム……?何やってるんだ?」
シーツを持ち上げたクリスに恐る恐るといった様子で声をかけられた。暗くて表情まではよく見えない。
「なんだろう……いたずら?」
性器から口を離してそう答えると、クリスは困ったように息を吐いた。
「いたずらって……」
「ああ、でも仕返しかも」
「仕返し?なんの?」
「ふふ、内緒」
思わず込み上げた笑いを堪えて、先端に口付けて口内に迎え入れるとクリスの口からもどかしそうに声が上がった。
気付かれてしまったなら隠れる必要もないか。そう思って、舌を使って音を立てながら愛撫する。
どうするか考えて始めた訳ではなかったけど、自分自身を弄る手も止まらなくなっている。
行為に夢中になっていると、不意に身体を覆っていたシーツがよけられて、ベッドサイドの明かりがつけられた。
急な眩しさに一瞬目がくらんで、戻ってきた視界の先には、赤くなった顔で呼吸を荒げているクリスの姿があった。
どくり、と心臓が大きく跳ねる。
かわいい、と思ってしまった。いつもはたくましくて、かっこよくて、リードされてばかりなのに、今は僕の手によってその表情を変えている。
ドキドキと、まるで思春期の少年のように鼓動が高鳴り、一気に顔に熱が集まった。
その表情をずっと見ていたくて、口の中で育っている屹立を深く咥えた。
クリスの腰が揺れて上顎を突かれる。その反応も愛おしくて、口を窄めて吸い付いた。クリスの吐息と共に溢れ出た先走りの液を唾液と一緒に飲み込んで口を離す。
口で愛撫しながらその形がわかる度に、いつもそれを受け入れている場所が疼いてしまって我慢が出来ない。
もぞもぞともう片方の手を伸ばして、彼を求めてやまない後孔に触れた。指先で撫でてみるが、簡単には受け入れてくれそうにない。入らないのだと思うと余計に欲しくなって、じわりと瞳に涙が滲んだ。
「クリス……ごめん、あれ取って?」
なんとか呼吸を抑えて居るらしいクリスに、ベッドサイドの引き出しを指さしてお願いする。
クリスは一瞬迷ってから頷いてその中身を取り出した。未使用のスキンとローションを取り出したクリスがローションの蓋を開けようとしたのを、手を伸ばして制止する。
「トム?」
「ダメ。今日は僕がするから」
そう言ってそのままチューブを受け取り、脚から下着ごとズボンを抜き取って、四つん這いの状態でローションを垂らした指を疼く後孔に埋め込んだ。
「んんっ……」
違和感に小さく声が漏れる。ぐにぐにと指を動かしていると、クリスが起き上がって僕の頬を撫でた。向けられている瞳はどこか心配そうだ。
「トム、急にどうしたの?」
「クリスは僕にされるのは嫌?」
「嫌なわけないけどさ……」
「じゃあ、今日は僕にさせて?」
お願い、と自然と上目遣いになってしまった体勢で訴えると、僕に甘いクリスは息を吐いてつむじにキスをした。
甘い感覚に身体が震える。
「後でちゃんと説明しろよ」
僕の濡れた唇を撫でながらそう言ったクリスは、性器を咥えられたことでもう一度息を吐いた。
見上げたクリスの瞳に深い欲が宿ったことに気付くと、指を包み込んでいる粘膜がきゅっと締まる。もっと硬いものが突き入れられるのを期待して、肉壁が熱を持って蠢きだした。
途端に挿入が楽になり、臀部からぐちゅぐちゅと濡れた音が響く。
「ん、ン、っ……んぅ」
「あー……トム、やばい……」
途中までしか飲み込めないほどに成長した性器から口を離すと、唾液で濡れたそれはいやらしく明かりに照らされていた。
もう早く奥を満たして欲しくて、溢れ出た唾液を嚥下する。
体内に埋まっていた指を抜き取り、目の前の張り詰めた性器に素早くスキンを付けて、クリスの上半身を押してベッドへと戻してその上に乗り上げた。
「トム……」
熱っぽく僕の名前を呼んで、後ろの窄まりに向けて伸ばされたクリスの手を途中で捕まえて、その指先にキスをする。
「今日は僕がするって言ったでしょ?」
有無を言わさず掴んだ手をシーツの上に戻し、僕は待ち望んだものを受け入れるために腰を上げて、勃ちあがった先端を後孔に擦り付けた。そのままゆっくりと腰を落としていく。
「ん、ぁ……っ」
さっきまで口に含んでいたものが、今度は僕の粘膜を擦り上げる。
見下ろしたクリスの表情が快楽に歪んでいて、腰からゾクゾクと快感が這い上がった。
ゆっくりと時間をかけて全て飲み込み、荒い呼吸のまま上半身を倒して、クリスの顔中にキスを落とす。ちゅ、ちゅ、と音を立てながら頬を啄んでいると、クリスの両手で頬を掴まれ唇が重なった。
そのまま舌が挿し込まれて口内を蹂躙する。伸ばした舌を甘噛みされて腰が震えた。
クリスが触れている場所全てが気持ちよくて、自然と腰が揺れてしまう。
僕がするって言ったのに、このままだといつものペースに持っていかれてしまう。このままゆだねてしまいたくなる衝動を堪えて、唇を離して起き上がった。
彼のお腹に手をついて、ゆるゆると腰を上下に動かす。段々と律動が速くなっていくと、それに合わせて粘膜が体内に埋まっているものに吸い付こうとしているのがわかった。
「は、……トム、気持ちいい」
「っぅん、あ……!ぼくも、きもちい……っ」
クリスがうっとりと呟いて僕の手に彼の手を重ねた時、粘膜が激しく収縮して背中が反った。彼が欲しくて仕方ないと、僕の身体が訴えている。
快感を生み出している粘膜以上に、触れ合っている手が熱くて痺れるような気がしてしまうのは何故だろう。僕に向けられている欲に満ちた瞳を見ているだけで、僕の脳は考えることをやめてしまう。
見つめ合った瞳から、触れている肌から、同じように体温が上がっていることが伝わってきて、それが嬉しくて胸の奥がじんわりと温かくなる。
その時、僕の頭が快感に支配され始めていることに気付いたクリスに一気に奥まで突き上げられて、僕はそのまま彼に身を委ねた。

  *

「で?なんだったんだ?」
「なんだったって……?」
「ほら、仕返しって」
ベッドに二人並んで微睡んでいると、クリスは真面目な顔でそう言った。
じっと見つめてみてもその表情は変わらない。
「全然覚えてないの?」
「何を?」
クリスは心底不思議そうに首を傾げている。寝ぼけてしたイタズラを覚えていないなんて、なんだか小さな子供みたいで僕はつい笑ってしまった。
そんな僕を見てクリスの眉間に皺が寄る。嘘でもなんでもなく、本当に心当たりがないらしい。
「おい、トム」
「ふふふ、なんでもないよ」
「嘘だな」
「うーん、そうだなぁ……君がかわいいなって」
そう告げて唇に触れるだけのキスをすると、目の前の整った顔がますます訝し気に歪んだ。
僕が楽しんでいることに気付いたクリスは、仕返しとばかりに深いキスを与える。
僕はそれに応えるために目を閉じた。

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